The Phantom of the Opera
ジョエル・シュマッカー

よみうりホール(試写会)
Category: 新作
Rating: ★★★★
実はこのミュージカル、大好きなのである。大昔ニューヨークに旅行した時、ブロードウェイでこの舞台を観た。確か2番目か3番目に安い席だったにも関わらず、鳥肌が立った。早速次の日にはレコード店に走り、サントラCDを購入したものだ(日本でも解説・対訳付きのサントラが普通に買えることを知らなかった)。

そんなことがあったもので、まさにその舞台の完全映画化という本作も、日本公開が決まった時から心待ちにしていた。そして、一般公開に先駆けて試写会で観ることができる。何たる僥倖であろうか。大いなる期待を胸に会場に乗り込む。報道陣も来ているようだ。ロビーには舞台衣装と思しきドレスが飾ってあり、盛んにフラッシュが焚かれていた。

開映。字幕の担当があの戸田女史ということが最初に出て、一抹の不安を覚えたものの、致命的な誤訳はほとんどなく、時折珍妙な日本語が出てきた程度だった(珍妙な日本語というか、"The Music of the Night"という歌詞がそのまま「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」とカナ書きになっていたのは手抜きだな)。

さらに、ファントムを演じたジェラルド・バトラーという俳優、こいつ歌下手過ぎ。高音が出ていないのを無理に引っ張っている。サントラのマイケル・クロフォードとは雲泥の差、月とすっぽん。だいたいファントムなんて仮面で半分顔が隠れているんだから、顔より歌でキャスティングすべきなのだ(暴論ではあるが半分は当たっていると思う)。ただし、その他の俳優、クリスティーヌ役のエミー・ロッサムやラウル役のパトリック・ウィルソンはなかなか健闘していた。

そして良かった点。本作が舞台版の映画化であることは先に述べた通りだが、実際、非常に忠実に映画化されていた。後で聞いたところによると、シュマッカー監督は舞台版を観たことがなかったそうで、少なからぬ驚きであるが、それでいて舞台版のファンも楽しめる仕上がりになっていることもまた驚きだ。総合評価としてはかなりいい点をつけられるだろう。これでファントム役さえきちんと歌える俳優が演じていさえすればな…(まだ言ってる)。
Reconstruction
クリストファー・ボー

シネセゾン渋谷
Category: 新作
Rating: ★★★
カンヌだかどこだかで賞を獲った作品らしい。最初はあまり観る気がなかった。が、どうも世間での評価がずいぶん高いようだ。「映画愛好家よ、速やかに観るべし」なんて言っている人までいる。なになに、それではやはり自分も観ておかねばならぬな、ということで渋谷へ。

結論から言うと、雰囲気は悪くないものの、特に優れた作品とも感じられなかった。

冒頭から映画の作り手らしき人物の声がナレーションで入り、物語の状況説明を始める。しかしその語りの内容が、悪く言うと「これは俺が作った物語である、作るのも組み直すのも作家たる俺の自由だ」と言っているように聞こえて、どうもこいつは何か勘違いしてるんじゃないか?と思えてしかたがなかった。そういえば原題の「Reconstruction」も「組み直し」って意味だよな。できれば組み直さないでほしかった。

ところで後で知ったのだが、主人公アレックスと出会う外国人女性・アイメと、アレックスの彼女・シモーネを演じた女優さんは同じ人らしい。観ている間は全然気がつかなかったよ。彼女の演じ分けが完璧なのか、自分の注意力が散漫なのか。

#2005-6: パッチギ!

박치기/We Shall Overcome Someday
井筒和幸

ヤクルトホール(試写会)
Category: 新作
Rating: ★★★
2005年に入って初めての試写会。本作は2004年の東京国際映画祭で上映されており、その時には見逃していたので、楽しみにしていた。何しろ『ゲロッパ!』に続く井筒作品である。期待も高まろうというものだ。日本人の青年と在日朝鮮人の友情物語ということで、内容的にも興味を引かれるところ。勇躍、会場に向かった。

しかしながら蓋を開けてみるとそれほどの出来ではなかった。日本人と在日朝鮮人との間の深刻な問題を扱っているというよりは、兄ちゃんたちの喧嘩にまみれた青春に比重が置かれていて、在日問題は単なる背景でしかない。自分が期待し過ぎたのか、単に見どころを勘違いしていたのか。まあ「喧嘩にまみれた青春」というのは井筒監督の得意とするところではあるわけだが…。

もっとも出演者はなかなか魅力的で、とりわけヒロインの沢尻エリカが良い。「可愛ければいいんかい!」という突っ込みはナシで。
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吉村公三郎、今井正、山本薩夫

川崎市民ミュージアム
Category: 旧作
Rating: ★★★
川崎市民ミュージアムは渋谷から東急に乗って武蔵小杉まで15分、そこからさらにバスで10分という、およそ便利とは言えない場所にある。しかも今回は、久しぶりに来たものでバスを乗り間違えてしまい、気付いて降りたところから延々15分も余分に、冷たい雨の中を歩くはめになった。

そこまでして何故わざわざやってきたかというと、ひとえに「この映画に香川京子様が出ているから」に他ならない。どうやらこの映画は三話オムニバスで、京子様はそのうち一編だけの出演のようなのだが、そんなことは関係ない。動く京子様をスクリーンで観ることができればそれで十分なのである(もっとも、出演作が上映されるたびにあちこち劇場に通っていては身がもたないので、未見かつビデオを所有していない作品に限っている。今のところ)。

で、映画のほうはというと、吉村監督の第1話はあっさりし過ぎ、第3話はシリアスなテーマの割に中途半端に終わり、やはり京子様出演の第2話しか見所がなかった。とは言いつつも、花嫁としてやってきた京子様を追い返そうとする男がいるとは、ちょっと俄には信じがたい。自分だったら逆にお嫁に来てくださいとお願いしているところだ。

…などと頭の中で妄想が炸裂していた上映が終わり、ロビーに出る。帰りのバスの時間までまだ間があったので、暖かい館内でしばらく時間を潰そうとしていると、警備員のおじさんに「閉館ですので」と雨の降り続く外に追い出されてしまった。ちぇ。
Civilization
トーマス・H・インス

フィルムセンター大ホール
Category: 旧作
Rating: ★★★★
フィルムセンター(以下FC)では2004-2005の年末年始に「アメリカ無声映画傑作選」なる企画をやっている。いや、この文章を書いている現在はもう終わってしまっているので、「やっていた」と書くべきだろうか。

普段、FCの料金は一般が500円である。だが今回の企画は、無声映画の上映にライブでピアノ伴奏が付く関係で、1000円となっている。吝嗇な自分は単純に料金が倍になっただけでウームと思ってしまうのであるが、もとより「どうしても観たい」という作品がラインナップの中になかったこともあり(ルビッチの未見作品でも入っていればまた違っていただろうが)、それでも無声映画+ライブ伴奏というのに少し興味が湧いたので、そこそこ有名なこの作品1本くらいは観ることにしたというわけだ。

ピアノ伴奏を担当するのはフィリップ・カーリなるアメリカ人。何でも「米国を代表する無声映画伴奏者」(FCのサイトより)とのことだが、申し訳ないが全然知らなかった。一体どんな人かと思っていたら、上映開始のアナウンスが流れてから登場した本人を見ると、ごく普通の、そのへんにいるようなおっさんであった。

さて映画であるが、1916年の作品とはとても思えないほどのモブシーンと特撮技術(精密な合成撮影など)に驚いた。もちろん反戦を訴えるテーマもいいのだが、やはり映画自体の出来あってこそのテーマであろう。「若き小津安二郎が映画を志す契機ともなった」(同じくFCサイトより)とのことだが、それも納得だ。

そして本企画上映の目玉であるピアノ伴奏。いや、考えてみれば「伴奏」なのだから、この映画の上映時間である87分間はずっと休みなしに演奏し続けているわけだ。これはまこと重労働である。体力的なこともさりながら、87分ぶんのオリジナル音楽(伴奏であるから当然映画の内容に合ったものでなくてはならない)がこの映画のために作曲され、しかもそれがライブで聴けるのだ。何と贅沢な上映会であろうか。

トータルで考えると、これで1000円はかなりお得である。もっと他の作品も観ておけばよかったなあ。と今さら思っても後の祭りであるが…。